『店主の人柄を空間化したコーヒーショップ』
若い夫婦2人で無理なく切り盛りできる2階建てのショップとして計画され、静かに思い思いの時間を過ごしてもらう居場所を提供することをコンセプトにしたコーヒーショップ。
ゆっくりと時間をかけて地域の人々に愛されるよう、一過性のトレンドに左右されないしなやかな強さを持つ空間を目指した。
ー 店主の人柄を空間化する ー
限られた窓からの採光を最大限拡散できるようヴォールト天井を採用した。
ゲストのためのささやかな居場所と店主の作業場は天井高さを抑えて落ち着きを、ゲストと店主とのコミュニケーションの場であるカウンター上部は天井を高く開放感を与えるなど、天井のカタチが空間に密度を与えることを期待した意匠となっている。
これらのイメージの源は店主の人柄であり、ショップ全体の雰囲気はそのキャラクターを主軸にして表現できればと考えた。
ー 振る舞いを切り取る舞台づくり ー
提供するコーヒー豆にはキャプションとともにテイスティングボトルが添えられ、店主の説明も相まってコーヒー豆に対する理解度を高めてくれる。
一連の接客の後に店主自らコーヒーを淹れる、この時間を店主とともに演出するのが8mある木製カウンターである。
白を基調にしたミニマルな空間の中に温かみと、コーヒー豆を際立たせる素材選びや手触りの質感に配慮したディテールを施した。
店を切り盛りする店主の立ち振舞いが空間に彩りを与えてくれることを期待したデザインとなっている。
ー 長居したくなる仕掛けづくり ー
ダイナミックな印象の1階とは相反する印象の2階は、トップライトからの自然光を活かした落ち着いた空間となっている。
レンタルスペースとして機能するため、がらんどうの空間をベースに窮屈にならないよう距離を置き配置した客席には居場所のバリエーションを持たせるためそれぞれ異なる什器を採用している。
店主が選書する書籍を納める本棚はつい手に取りたくなるようなデザインが施され、この空間でゆっくり過ごしてもらいたいという店主の意思を表現したものとなっている。
空間全体として商業空間としての耐用性を考慮しながらも住まいを作るようなやさしい素材選定をした。
随所に与えた余白と商業的な照明計画とが合間って、お店でも家でもない独特の居心地の良さをつくりだしている。
- クライアント|KALM
- 所在地|東京都世田谷区等々力
- 主要用途|コーヒーショップ
- 専有面積|257.88㎡
- 写真|志摩大輔